院長先生から
- うちでも手術はできますが、どこの病院でもご紹介します
- うちで手術する場合は開腹手術になります
- 開腹手術は患者の負担は大きいですが、そのかわりしっかり見れます
- この若さでこれだけ進行している患者はあまり見たことがない、どこの病院でも手厚い対応をしてくれるでしょう
そのような感じのことを言われた。
翌日、私は大学病院の放射線科の教授秘書をしている知人に連絡した。
息子のことも生まれたときから知っている。
「次男が大腸がんになった。手術が必要になった。進行している。今は○○病院に入院しているが、どこでも紹介してくれると言っている。やはり大学病院の方がいいのか?」
まくしたてるように電話口で話したと思う。
知人は「え?誰のこと?誰が癌になったの?」と。
次男だと伝えると、「えぇ!あの○○ちゃんが!?」と驚き、先生に伝えるので転院したほうがいい、と助言してくれた。
一般の病院と大学病院と何がどう違うのかはわからないが、知人が間に入ってくれるのは心強い。
大学病院の方が設備もいいし最新の手術をしてくれるのだろうと、何の根拠もないがそう考えた。

大学病院へ転院
院長先生へ「大学病院へ転院したい」とお伝えし、手続きをすすめてもらった。
院長先生曰く、その大学病院だと「腹腔鏡(ふくくうきょう)手術」になると思います、とのこと。
お腹に小さな穴をあけて手術をするとのこと。患者の体の負担が小さいそうだ。
院長先生が、開腹手術はしっかり中を見れる・・・とおっしゃっていたのが気になった。
腹腔鏡手術では全部しっかり取り除けないのではないか・・・。
いろいろ不安はよぎったが、兎に角知人の勧めるとおり、大学病院に転院した方が良いのだと思うしかなかった。
その日にうちに、大学病院の外科の教授からお電話をいただいた。
経緯がどうだったのかはうろ覚えだが、「本人への告知」についての確認であった。
私は「本人へは告知はまだしていない、まだしないで欲しい。」とお願いをした。
教授先生は諭すようにおっしゃった。
- 告知をしないで入院することは可能である
- ただしまわりは皆癌患者である
- 告知しなくても気づくはず
- その方がご本人が不安になるのではないか
- 治療は医者だけがするものではなく、ご本人と一緒にするものである
- 我々はチームが同じ考えで動いている。ひとりだけ告知をしない状況は無理が生じる
最初の病院では、院長先生、外科の先生、看護師さん、皆が次男のことを気にかけて手厚く対応してくださっていた。
私を見かければ「お母さん、大丈夫、がんばりましょう。」と励ましてくれた。
大学病院ではやはりそのようなアットホームは雰囲気はないのだろう。
教授先生のおっしゃることはその通りだ。
本人が自覚なしに治療などできるはずがない。というかいつまでも誤魔化せるはずがない。
教授先生へのお願い
私は、教授先生に1つだけお願いをした。
「告知はします、私たち家族からします。ただ、入院して先生の話をお伺いした後に伝えたいのでそれまでは本人には伝えないで欲しい。」と。
教授先生は承諾してくださったけど、「本人が気づかない保証はありません。」と念押しされた。
次男に「ここは病院が小さいから、ちゃんと大学病院で検査してもらった方がいいので転院するね。」と伝えた。
そして、数日後に救急車で20分ほどの大学病院に転院することになった。
先生や看護師さんに見送られ大学病院に向かった。

